EPISODE
09
“生を実感していただくケア”を、
最期のその時まで。
看取りケア
85歳 (男性) G様 /ウェルケアガーデン馬事公苑
2021.06.02

「最期はホームで穏やかに過ごしてほしい。」ご家族のご希望で看取りケア対応に。

ご入居中のG様は誤嚥性肺炎による入退院を繰り返されており、入院先の医師からは「次に発症したら療養型病院へ転院するしかない。」との宣告を受けていました。ご家族からは「これからは辛い治療を繰り返すよりも、ホームで穏やかに過ごしてほしい。」とのご希望があり、お看取りを前提としたケアに切り替えることとなりました。
最期の時を心穏やかに、かつ、生きる喜びを感じながらお過ごしいただくために、ご入居者に寄り添いながら“生を実感していただくケア”を行うことにしました。

楽しみも、喜びもあきらめない。“生を実感していただくケア”を。

人はそれぞれ自分のお気に入りの暮らし方や好きな食べ物など、自分らしいライフスタイルを形づくりながら毎日を生きていると言えます。私たちが考える“生を実感していただくケア”とは、病の床にあっても生きる喜びを諦めることなく、これまでの人生の中で楽しいと思っていらしたことをできる限り体感していただくことです。G様の場合は、お好きだった入浴を楽しみ、好物の甘いものを召し上がっていただくことを目標としました。 そこで、入居当初から体力の著しい低下が見られていたため、体力を上げるためにベッド上での寝たきりの時間を減らしていくことから始めました。当初は座った姿勢をご自身だけの力で保つことが難しかったため、常にスタッフが見守りできる体制としました。また、誤嚥性肺炎には最大の注意を払い、こまめな口腔ケアを行いました。

チョコレートの甘さに微笑み、入浴に「気持ちいい。」と深いため息。

G様は甘いものがとてもお好きでした。そこで、多職種のスタッフが連携しながらG様の覚醒状態が良いときを見計らって、「このタイミングだ!」という瞬間にチョコレートを舐めていただくことに成功!この頃には言葉を発することも少なくなり、表情も乏しくなっていましたが、チョコレートを口にした瞬間は満面の笑みを浮かべ「美味しい。」とはっきり仰ってくださいました。ご本人のうれしそうなご様子は私たちスタッフにも感動を与えてくださいました。ちょうどバレンタインデーの時期でもあったことから、その光景は印象深く残り、今でも私たちの力になってくれています。 また、お風呂が大好きだったことから、体調良好だと判断した日に、介護スタッフ2名・看護師1名の3名体制で入浴介助を行いました。肩まで湯船につかったのは本当に久しぶりだったため、目を閉じて「はぁ…。」と大きく吐息を漏らし、気持ちよさそうにされていました。これが最後の入浴となり、わずか3分間でしたがご本人からは「とても気持ちよかった。」とのお言葉を頂戴することができました。

ご家族に見守られ、穏やかに最期の時を迎えられました。

ご臨終に際しては奥様やお子様たちがG様を囲み、ご家族のさまざまな思い出を語られる中で静かに息を引き取られました。たいへん穏やかな表情をされており、悲しみの中にもご家族の安堵感が感じられた最期でした。 奥様からは「周囲の方々にお話ししても、ここまで対応してくださるホームは見当たらないと一様におっしゃいます。私も最後はここでお世話になりたい。」とのお言葉を頂戴し、さらに後日には感謝のお手紙もいただきました。