リハビリが進まず、笑顔と活気を失っていた日々。
右後頭葉皮質下出血で入院後、意欲低下のためリハビリが進まず、経口摂取が難しいとの判断から胃ろうを造設されたB様。その後も意欲低下が続いたことによりリハビリが進まず、状態改善を図るため、当ホームにご入居されました。
ご入居当初は「死にたい。」「私は捨てられた。」などの悲観的な発言が多く、また、強い帰宅願望から涙ぐまれる日々が続きました。
ご入居当初は「死にたい。」「私は捨てられた。」などの悲観的な発言が多く、また、強い帰宅願望から涙ぐまれる日々が続きました。
「故郷に帰らせてあげたい。」「故郷に帰りたい。」―—ご家族とご本人、双方の願いを叶えるために。
そのような状況の中、面会に来られたご兄弟から「故郷で過ごさせてあげたい」と言われ、O様も「故郷に帰りたい」と望まれました。そこで、B様の在宅生活を可能にするため、私たちスタッフは基本ケアである水、食事、排泄、運動の実践と認知症状の改善という5つの課題を克服するために動きはじめました。
①食事
入居当初は食事カロリーが足りておらず、昼食時のみ胃ろうから経管栄養を行っていましたが、全ての食事を口から摂取できるように取り組みました。B様は食事をする機能に問題があるのではなく、食への興味・関心がなく必要摂取量に至らなかったことが判明したため、食事に「楽しみ」をもってもらう環境作りを行い、さらにご本人のお好きなものを提供することで、完全にお口から召し上がっていただくことができました。
②水分
本人の嗜好に合わせた飲み物を提供することで、水分摂取量を増やすことができました。
③排泄
オムツからリハビリパンツに変更し、定期的にトイレへ誘導することで失禁される回数が減少。また、リハビリパンツから布パンツ+パットのみに変更すると、尿意を感じられるようになり、ご自身も失禁することを嫌うようになられました。その後、さらに布パンツ+ナプキンへと変更し、ご自身でトイレに行けるようにお部屋の家具のレイアウトを変更した結果、最終的に自立排泄することができるようになりました。
④認知症の改善
他者の顔を覚えることが出来ず、環境の変化に怯えていらっしゃったB様ですが、他人との関わり合いを増やすために居室フロアを変更したり、スタッフが積極的に話しかけを行うことで、ご自身が「今、私は老人ホームにいる」ということを認知していただけるようになりました。
⑤歩行
歩き方を忘れてしまっていたため、U字歩行器でトイレ誘導を行うことから始めました。慣れてき頃に併用していた車いすを中止しましたが、歩行状態はぐんぐん安定していきました。歩行訓練を繰り返し行うことで、最終的にはウォーカー歩行で近所のコンビニまで歩いてお買い物に行けるようになりました。
B様の夢が叶った日。笑顔のお別れ。
それぞれの課題をクリアしていったB様。近所のコンビニでお買い物された際には、大好きなお煎餅をご自身で購入出来たことで、とても満足そうな表情を浮かべていらっしゃいました。「今度はお煎餅作りに行きたいわ。」と前向きな発言も見られ、「死にたい。」と活気がなく悲観的だったB様はどこにもいらっしゃいませんでした。
そして、ご入居から約8か月後。B様はご自身の希望であった“故郷に帰る”ことを叶えられました。
笑顔でご家族の車に乗り込まれ、手を振るB様。お別れすることは寂しいけれど、B様の故郷での元気な生活を願い、私たちも思いっきり笑顔で手を振ってお見送りいたしました。