EPISODE
07
社会との関わりを豊かに楽しむために、
地域サロン参加者から運営者へ。
地域交流
ホームご入居者の皆様 /ウェルケアテラス新座
2021.06.02

楽しく健康的な生活を維持するために、外出の機会を増やす。

一般的には、老人ホームにご入居されると外出の機会が減ってしまい、ホームの敷地内だけでの生活になってしまう傾向があります。狭い生活空間で過ごすうちに活動量は低下し、健康状態の低下や介護度の重度化へとつながってしまいます。その状況を改善するために、当ホームでは積極的に地域活動に参加することでホーム内の閉じこもり予防と重度化予防を行うとともに、「豊かな社会生活を取り戻す」ための取り組みを行いました。

制限が多く、参加しにくい地域イベント。ホームでの地域サロン立ち上げへ。

この取り組みを行うまで、ホームと地域の関係性は希薄でした。そこで、ご入居者の外出の機会を増やし、地域とのつながりを作るために、ご入居者が参加できる地域サロンを探すことから始めました。また、並行してホーム内でヨガ教室や三味線演奏会など、地域の方々にもご参加いただけるアクティビティを開催しました。 まずは地域開催のイベント「高齢者いきいきサロン」のハッピーダンベル体操に参加。地域住民の方に交じって10名ほどのご入居者が参加するうちに顔なじみも増え、「先週休んでいたけれど体調はどう?」「今度はホームの催し物に呼んでね。」などと気軽な会話を交わせるようになっていきました。また、ご入居者のご紹介でホームにご入居された方もいらっしゃいました。 参加者が増えたため他のサロンも調査。新座市老人福祉センター開催の介護予防体操の講座に参加したのですが、「車椅子の方は参加できない。」「参加時は他の方の邪魔にならないように固定の場所でやってほしい。」「他の方の迷惑になるので送迎車を玄関前につけないでほしい。」など制約が多く、継続利用は断念することとなりました。 また、他の「いきいきサロン」にも定期的に参加していますが、参加人数をさらに増やしたい意向を運営側に伝えたところ、会場の都合から1回の参加人数を減らしてもらえないかと打診されてしまいました。 このような経験から、公共のサロンへの参加が難しいのであればホームが主体となってサロンを運営すればいいのではないかとの結論に達し、開催を決断しました。

地域サロン実施のための協力など、地域との信頼関係が生まれる。

まずは会場探しからです。公民館は受け入れに消極的で、使用条件も制限が多かったために断念。そこで、ホームとして町内会に入会していたことから、町内会に集会所の使用を打診すると一応の条件はあるものの使用許可をいただき、会場を確保することができました。 記念すべき第1回目は、ホームのアクティビティでも人気の椅子に座ってできる体操「元気ダンス」です。地域の方々には回覧板での告知に加え、地域包括支援センターへのチラシ配布、町内会のご協力を得て町内の掲示板へチラシ掲示などを行いました。その結果、初回はご入居者11名に加え、「高齢者いきいきサロン」でご一緒された方など地域から4名の参加となりました。終了後も会話が弾み、次回開催の確認をしたり、講師の方に社交ダンスを披露していただいたり…。現在もホームから15名程度、地域から5名程度が継続的に参加されています。 今回の地域サロン開催に際して町内会との関係づくりが構築できたことから、町内会長から集会所の管理全般の打診をいただき、お受けすることになりました。また、地域包括支援センターのケアマネジャーより「閉じこもりの方に紹介させていただきたい。」と開催日の問い合わせをいただきました。今後も町内会のゴミ拾いへの参加や、管理委託された集会所の定期清掃をご入居者と一緒に行う予定で、地域との良好な関係をさらに深めていこうと考えています。

ホーム主体から、ご入居者による自主運営のサポートへ。

今回の取り組みを経て、老人ホームのスタッフにはご入居者の社会生活を広げる責任、役割があることを実感しました。スタッフが地域住民や地域活動との間を取り持つことで、ご入居者の社会生活は広がります。帰りがけにご入居者が地域の方に「またいらっしゃいよ。」と声がけされていたのを見て、サロンに参加する受け身の立場から運営する側になったことを認識されている様子がとても印象的でした。それは“誰かの役に立っている実感”や“社会的な役割の自覚”の証であると言えます。 今後は参加するだけでなく、より運営する側の楽しさを知っていただくために、ご入居者には受付や飲み物の配布、次回開催のアナウンスなどの役割を担っていただく予定です。ホームとしては継続的に「ご入居者による自主運営」のサポート体制を整え、「参加者から運営者へ」を合言葉に、ご入居者が主体性をもって「豊かな社会生活」を実感していただく取り組みを続けていきたいと考えています。